藤井寺駅前のイオンを散歩してみた

藤井寺駅に降り立つと、午後の光がロータリーにゆっくりと差し込んでいた。大阪の中でも、どこか“生活の匂い”が残るこの街の空気が好きだ。急ぎ足の人が多い大都市とは違い、時間の流れが少しだけ緩やかに感じられる。

駅を出て真正面に見えるイオン藤井寺。派手さはないが、街に落ち着いて馴染んでいる建物だ。買い物に来るというより「生活の一部として立ち寄る場所」といった存在感がある。

自動ドアが開くと、店内のひんやりとした空気が頬をなでる。エントランス付近はほどよい人の流れで、ベビーカーを押す若い夫婦や買い物帰りの年配の女性が自然に行き交っている。生活が日常のデコレーションとして散りばめられたような、温かい気配が漂っている。

一階の食品売り場を回りながら、いつの間にか僕は旬の野菜を眺めていた。鮮やかな色が並び、料理の予定がなくてもつい立ち止まってしまう。遠くから聞こえる包丁の音や食品トレーが重なる音が、なぜか子どもの頃に母に連れられて行った商店街の風景を思い出させる。街は違っても、こういう“生活の音”には不思議と共通点がある。

エスカレーターに乗って二階へ向かうと、照明がゆるやかに反射して小さな光の軌跡をつくる。その光が揺れる様子を見ていると、なんとなく昔見た映画館のロビーを思い出す。年齢を重ねるにつれ、買い物そのものより「ただ歩いて景色を感じる」という過ごし方に楽しさを覚えるようになった。

二階には服屋や雑貨屋、靴屋、家電量販店、それにゲームセンターが並んでいる。生活の実用を中心に揃えたフロアという印象だ。
服屋を横目に歩きながら、トルソーが着ているコーディネートをなんとなく視線で追う。雑貨屋の前では季節物のアイテムがきれいに並び、靴屋に入ると新品のゴムの匂いがふっと鼻に届く。日常に必要なものが、過剰でも不足でもなく、落ち着いた距離感で揃っている。

家電量販店では白い照明に照らされた最新のガジェットがきらりと光り、ゲームセンターからは優しい電子音と笑い声が漏れてくる。休日の街らしい、ゆるやかな活気が漂っていた。

ひと通り歩いたあと、一階へ戻り、入り口横のベンチに腰かける。人が買い物袋を下げて行き交い、自動ドアが開閉するたびに風が流れ込む。この風と音のリズムが、妙に心を落ち着かせてくれる。子どもの声、レジの機械音、誰かの足音。それらすべてが街の鼓動のように思えてくる。

ただ散歩しただけだ。特別な買い物もしていない。それでも、こうして“生活の中心”に身を置くと、心の中のざわつきが少し整っていくのを感じる。藤井寺駅前のイオンは、日常の中にある小さな休憩所のような場所だ。

外へ出ると、陽射しはやや傾き、駅前の色が少しだけやわらかく変わっていた。電車の音、人々の足取り、信号の色。すべてが穏やかな午後の景色の中に溶け込んでいる。

また時間を見つけて歩こう。次に来たときには、今日とは違う表情の藤井寺が見えるかもしれない。